今回は、前回のセマグルチド注射薬の肥満症への保険適応のニュースがありましたので、糖尿病治療薬として使用する飲み薬の(経口薬の)体重減少効果について、少しまとめてみようかと思います。
先に書いておきますが、決して、体重減少を認めるので勧めるという意図ではありませんし、自費診療で使用されているセマグルチドを推奨するということではありません。
ただ、自費診療を完全に否定するという事でもありません。という立場を私はとっているということは明記しておきます。
これまでに、セマグルチドの経口剤は糖尿病治療として許可される為や、効果を判定する為に沢山の試験がされてきました。今回はその試験の中の一部を取り上げます(PIONEER試験と言われる一連の試験)。これは糖尿病治療薬ですので、あくまで、薬剤効果の主要評価項目は血糖効果や安全性、心血管疾患の予防効果などの評価の為にあり、今回取り上げるのは副次効果としての体重減少をピックアップしている事であることはご理解ください。
では今回まとめてみようと思って集めた研究は下記になります。
個人的にまとめた結果に行きます。
体重減少効果のデータについて簡潔に下記に示します。(平均値・中央値や標準偏差・p値などは省いていますので、気になる方は上記原文を参照してください)
【PIONEER2】
ベースラインからの変化量(%) 52週時点
経口セマグルチド14mg −3.8% エンパグリフロジン −3.6%
5%以上体重減少した人の割合 52週時点
経口セマグルチド14mg 40.4% エンパグリフロジン 39.2%
【PIONEER3】
ベースラインからの変化量(Kg) 52週時点
経口セマグルチド3mg -1.6kg シタグリプチン −0.8kg
経口セマグルチド7mg -2.4kg
経口セマグルチド 14mg -3.4kg
ベースラインからの変化量(Kg) 78週時点
経口セマグルチド3mg -1.8kg シタグリプチン −1.0kg
経口セマグルチド7mg -2.7kg
経口セマグルチド 14mg -3.2kg
5%以上体重減少した人の割合 52週時点
経口セマグルチド3mg 15.4% シタグリプチン 11.4%
経口セマグルチド7mg 27.3%
経口セマグルチド14mg 33.8%
5%以上体重減少した人の割合 78週時点
経口セマグルチド3mg 19.5% シタグリプチン 13.3%
経口セマグルチド7mg 27.1%
経口セマグルチド14mg 32.5%
【PIONEER6】
ベースラインからの変化量(Kg) 試験終了時点(イベント発生122件まで)
経口セマグルチド14mg -4.2kg プラセボ −0.8kg
【PIONEER9】
ベースラインからの変化量(Kg) 52週時点
経口セマグルチド3mg 0 kg リラグルチド0.9mg +0.4kg
経口セマグルチド7mg -0.6kg
経口セマグルチド14mg -2.8kg
5%以上体重減少した人の割合 52週時点
経口セマグルチド3mg 2.6% リラグルチド0.9mg 4.9%
経口セマグルチド7mg 11.6%
経口セマグルチド14mg 41.5%
【PIONEER10】
ベースラインからの変化量(Kg) 52週時点
経口セマグルチド3mg 0 kg デュラグルチド0.75mg +1.0kg
経口セマグルチド7mg -0.9kg
経口セマグルチド14mg -1.6kg
5%以上体重減少した人の割合 52週時点
経口セマグルチド3mg 5.5% デュラグルチド0.75mg 6.3%
経口セマグルチド7mg 16.3%
経口セマグルチド14mg 22.0%
まとめ
各試験で経口セマグルチドと比較する薬剤や治療介入方法は異なります。プラセボ(偽薬)が相手(対象)だったり、血糖を下げるために追加する薬剤が違ったり、心血管疾患のデータが揃うまで試験を続けるなどなどいろんな違いがあります。また、様々な研究は、まず、どのような効果を評価したい→そのためにはどのような比較をするべきか(研究デザイン)→結果として主要となる効果の評価を行う。という順序で行うためにデザインされた研究になります。今回お示しした研究は全て、体重減少は目的ではありません。副産物として(副次効果として)出てきたデータですので、これが全てを示すというわけではないと言う事は理解していただかなければなりません。
ただ、少しだけ傾向がある事にはお気づきになったかもしれません。まとめてみましたのでご参考にされてください。