こんにちは。
今回はちょっと意外な、でも 注目されている研究をご紹介します。
「帯状疱疹のワクチンが、認知症の予防になるかもしれない」
こんなことを聞いたら、「えっ、本当?」と驚く方も多いのではないでしょうか。でも、実際に世界的な医学雑誌『Nature(ネイチャー)』や『JAMA(ジャマ)』などに掲載された研究で、そうした可能性が本気で議論されているんです。
帯状疱疹(たいじょうほうしん)は、子どものころにかかった「水ぼうそう」のウイルスが、大人になってから体の中で再び活動を始めて起こる病気です。
ピリピリとした痛みや赤いブツブツが皮ふに出て、痛みが長引くこともあります。特に50歳以上で多くなります。
このウイルス、実は神経にもダメージを与えることがあるんです。そこから「もしかすると、脳にも悪影響を与えて認知症のリスクを高めるのでは?」と考えられてきました。
これは生ワクチン(Zostavax)での研究 : Nature volume 641, pages438–446 (2025)
イギリスのウェールズという地域で行われた研究では、帯状疱疹ワクチンを受けた人と受けていない人を比べて、7年間で認知症になる人の数を調べました。
その結果、ワクチンを受けた人では、認知症になる人が20%も少なかったんです!
つまり、5人に1人くらいが認知症を防げたかもしれないという結果です。 ただこれは女性に現れ、男性には傾向がみられたのみでした
この研究はとてもよく設計されていて、ワクチンを打った人がたまたま健康意識が高いから、という理由では説明できないように工夫されています。
では最近人気の組み換えワクチン(シングリックス)はどうなのでしょう?
こちらを参考 :Nature Medicine volume 30, pages2777–2781 (2024)
生ワクチンは米国では2017年以降使用されなくなってます。(日本では二つから選べます。)
もともとは「生ワクチン(Zostavax)」でこのような結果が出ていたのですが、今はより効果の高い**組換え型ワクチン「Shingrix(シングリックス)」**が主流となっています。
アメリカで行われた大規模研究(Nature Medicine, 2024年)では、Shingrixを接種した人は、生ワクチンを接種した人よりもさらに長く認知症にならずに過ごせることが示されました。
具体的には、
認知症の発症が平均で約5か月(164日)遅れた
その効果は男性よりも女性でより強く現れた
Shingrixには強力な免疫刺激剤(アジュバント)が含まれており、それが脳の神経を守る働きにもつながっているのではと考えられています
このように、帯状疱疹そのものをしっかり防げるワクチンほど、認知症のリスクも下げられるかもしれないという流れが見えてきました。
詳しい仕組みはまだ研究中ですが、考えられている理由としては…
ウイルスが再び暴れないようにして、脳へのダメージを防ぐ
体の中の“炎症”をおさえることで、脳の老化を防ぐ
ワクチンによって免疫が整い、全体的な健康が守られる
どれか1つというより、いくつかの要因が重なっていると考えられています。
「ワクチンも大事だけど、もっと身近なことでできる予防法はないの?」
そんなあなたにお伝えしたいのが、運動の力です。
適度な運動は、認知症の予防につながることがはっきりわかってきています。
特に筋力トレーニングやウォーキングなどの継続的な身体活動は、脳と身体の健康を同時に守るカギになります。
身体活動を増やしましょう!!!
あっ! 話が脱線しました。
帯状疱疹ワクチンは、50歳以上の人におすすめされているワクチンです。もともとは「帯状疱疹を防ぐため」のものですが、もしかすると将来の認知症リスクを減らすという意味でも、大きな価値があるかもしれません。
ただし、「ワクチンを打てば認知症にならない!」とまでは言えません。あくまで、「確率が下がるかも」という段階です。